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「医療過誤弁護士銀子」富永愛著

 「元外科医の現役弁護士が医療過誤事件のリアルを小説化!」というキャッチコピーが表紙に掲げられているが、そのとおり、充実した内容が盛り込まれていた。2024年9月発行、経営書院。

 もともとは「医事業務」という医療者向け雑誌に連載されていたとのことで、手術室での様子、看護師・病院事務長の感情のほか、賠償保険についてもリアルに盛り込まれていた。

 私自身、患者側として医療事件を担当しているが、患者側と医療者側とのコミュニケーションの欠如が紛争につながっている点も多いと思う。患者側が弁護士に委任し、医療機関と交渉するのはハードルが高いし、特に地方ではなおさらである。

 この小説が多くの医療者に読まれることで、医療安全管理体制がさらに徹底されることを期待している。過ちは過ちとして素直に認め、謝罪・補償する。患者・遺族がわざわざ弁護士に委任することなく、早期に紛争が解決されるのが、患者側だけでなく、医療機関側にとっても望ましいと思う。